ご主人が認知症になっても安心して生活ができる対策として使える贈与税の配偶者控除
認知症になれば、
自宅を売却することが
できなくなります。
ご主人が認知症になっても不安のない生活が
送れるように、
ご主人が元気なうちに
自宅を贈与しておきましょう。
贈与税の配偶者控除の特例を使えば、
2,000万円まで贈与税が掛かりません。
この制度を上手く使って、
将来の可能性を残しておくことが大切です。
これで安心ね
認知症とは
認知症とは、
一度正常に発達した認知機能が
後天的な脳の障害によって持続的に低下し、
日常生活や社会生活に支障をきたすように
なった状態を指します。
厚生労働省の試算では、
令和7年には高齢者の5人に1人が
認知症になる可能性もあるようで、
認知症になることは
珍しいことではなく至って普通のことであり、
誰にでも起こりえる病気といえます。
自分が認知症になるなんて…
認知症になると
認知症になると今朝食べたものを忘れたり、
迷子になったりと記憶障害や、
理解力が低下して何度も同じ話を聞いたりと
日常生活に様々な支障がでます。
さらに認知症になると
もう一つ大きく変わることがあります。
それが判断能力が無いとされ
色々な制限が生じることです。
例えば、
預金を引き出すことができなくなります。
住んでいた自宅を売却できなくなります。
遺言を書くことができなくなります。
アパートを持っている場合、
新しい入居者と賃貸契約を
結ぶことができなくなります。
健康な状態であれば普通にできることが、
認知症になるとできなくなってしまうのです。
認知症になると相続対策ができない
と言われますが、
これは上記のように判断能力が無いことから
多くの制限を受けるためです。
こんなに悩みが増えるなんて…
成年後見制度を利用する
認知症になって、
必要に迫られて預金を引き出したい、
自宅を売却したい
ということもあるでしょう。
こういった場合は諦めるしかないのでしょうか。
そういった認知症の人を支援するために
成年後見制度が設けられています。
成年後見制度は、
認知症などで判断能力が無い人を
後見人と呼ばれる人が、
本人に代わって預金を引き出すなど
財産の管理を行うことで、
判断能力が無い人を保護する制度です。
この成年後見制度を利用すれば、
後見人が預金を引き出したり、
自宅を売却する手続きを行ってくれます。
後見人には、
認知症の方の親族がなるケースと
弁護士や司法書士などの専門家が
なるケースがあります。
これで安心ね
成年後見制度のデメリット
成年後見制度を利用すれば、
認知症になっても
安心できるように思えますが、
この成年後見制度にはデメリットがあります。
デメリット① 費用が掛かる
一度成年後見制度を利用すれば、
それ以降ずっとこの制度を使うことになります。
判断能力が回復すれば、
成年後見制度の利用をやめることができますが、
現在の医学では認知症の回復の見込みは
ゼロに近いため、
結果として亡くなるまで成年後見が続きます。
そして、成年後見人に
月額2万円程度の報酬を支払う必要があります。
これが亡くなるまで続くわけですから、
金銭的な負担は決して少なくないです。
想像以上にお金が出ていくのね
デメリット② 家族のためにお金を使うことができなくなる
成年後見制度は、
判断能力が低下した人を
保護するための制度になります。
ポイントは「保護」するという点で、
認知症の人の財産を保護することを
目的としているので、
ご主人のお金は
ご主人のためにのみ使うことになります。
言い方を変えると「ご主人のためにしか」
お金を使うことができないということです。
たとえば、
自分たちが、これまで孫の学費を
援助していた場合に、
成年後見制度を利用してからも
孫の学費を援助しようと考えていても
援助により子供や孫の家計は助かりますが、
ご主人からするとただ自分のお金が減るだけで、
ご主人本人にメリットがなく、
ご主人の財産を保護することができません。
こうした家族のためにお金を使うことを
成年後見制度は認めてくれません。
後見人も人ですのでケースによっては、
家族のためにお金を使うことについて
心情的には理解を示してくれますが、
制度としてそういったお金の使い方は
認めれていませんので、
後見人としてもどうしようもないのです。
可愛い孫に援助してやれないなんて
自宅を贈与するメリット
自宅はご主人の名義です。
将来は、夫婦二人で老人ホームなどの施設に
入居することを考えていました。
施設に入居するのにまとまったお金が
必要なので、自宅を売却して、
その売却代金を充てることを考えていました。
老後に子供たちに迷惑をかけないようにと、
二人で思い続けてきたことです。
このような場合にご主人が認知症になりました。
そうするとなんと
自宅を売却することができなくなってしまうのです。
自宅を売却しないと
施設に入るお金を用意することができません。
認知症になって自宅を売却するために
成年後見制度を利用しても、
自宅が必ず売却できるわけではありません。
家庭裁判所が自宅を売却する必要があると
認めた場合にのみ、
後見人が売却の手続きをしてくれるのです。
さらに家庭裁判所の許可が必要ですので、
時間も掛かります。
そうならないように
ご主人がお元気なうちに
自宅を奥様に自宅を
贈与しておくことが大切です。
そうすれば、ご主人が認知症になっても、
奥様が自分の財産として自宅を売却することができ、
そのお金を使って、施設に入ることができます。
また、売却しなくても、
賃貸に出すこともできます。
リフォームして子供と同居することもできます。
このように将来の可能性を確保しておく意味で
自宅を贈与しておくことが大切です。
何も手を打たないと
ご主人名義の自宅をどうすることも
できなくなってしまうのです。
リフォームした家は素敵ね
自宅を贈与した時の贈与税
自宅を贈与する場合に問題となるのは、
贈与税です。
贈与税は贈与を受ける人(財産をもらう人)に
かかる税金です。
年間110万円までの贈与であれば贈与税は
ゼロになります。
もう少し詳しく説明すると
贈与を受ける人がその年に受けた贈与の合計額が
基礎控除を超える場合に贈与税がかかります。
贈与の場合、
基礎控除は年間110万円です。
つまり、年間110万円を超えれば、
超えた部分に対して贈与税がかかります。
そして、贈与税は贈与を受けた金額が
大きくなればなるほど、
税率が高くなります。
贈与税の表(夫婦間の贈与の場合)
基礎控除後の課税価格 200万円
以下300万円
以下400万円
以下600万円
以下1,000万円
以下1,500万円
以下3,000万円
以下3,000万円
超税 率 10% 15% 20% 30% 40% 45% 50% 55% 控除額 ‐ 10万円 25万円 65万円 125万円 175万円 250万円 400万円 国税庁HPより
仮に1,500万円の価値のある自宅を
贈与する場合
(1,500万円-基礎控除110万円)
×45%-175万円=450万円
自宅を贈与すると450万円
という贈与税を支払う必要があるのです。
自宅にそんなに価値があるなんて
贈与税の配偶者控除
贈与税には色々と特例が設けられています。
配偶者が自宅の贈与を受ける場合には、
「贈与税の配偶者控除」という特例が使えます。
これは、
婚姻期間が20年以上の夫婦が、
住んでいる自宅を贈与する場合に
最大2,000万円まで非課税になる制度です。
この2,000万円とは別に
贈与税の基礎控除110万円がありますので、
トータル2,110円まで無税で贈与することができます。
ただし、同じ配偶者からは一度しかこの特例を受けられません。
先程の例でいくと、
自宅の価値が1,500万円ですので、
贈与しても2,110万円までは非課税となり、
贈与税がゼロ円になります。
この制度を使えば贈与税をゼロに
抑えることができるのですが、
贈与税がゼロになったとしても
贈与税の申告は必要になりますので、
ご注意ください。
丁寧な説明で分かりやすいわ
贈与税の配偶者控除の注意点
贈与税を大きく下げることが
できる贈与税の配偶者控除ですが、
デメリットもあります。
それが贈与を受けた奥様に
不動産取得税が掛かります。
不動産取得税とは、
不動産を取得した人に対して掛けられる税金です。
相続により不動産を取得すれば
不動産取得税は掛からないことになっています。
しかし、
贈与により不動産を取得すれば
不動産取得税が掛かります。
また、
不動産の名義を変更するために
登記という手続きが必要になります。
登記をする時には、
登録免許税を支払う必要があります。
登録免許税は
相続による取得の場合にも掛かるのですが、
贈与による取得の方が高くなります。
登記を司法書士に依頼する場合には、
司法書士報酬も必要になります。
色々と費用がかかるのね
結論
認知症になれば、
自宅を売却することができなくなります。
ご主人が認知症になっても
不安のない生活が送れるように、
ご主人が元気なうちに自宅を
贈与しておきましょう。
贈与税の配偶者控除の特例を使えば、
2,000万円まで贈与税が掛かりません。
この制度を上手く使って、
将来の可能性を残しておくことが大切です。
これで安心ね